EVENT review vol.1

2019.10.15.tue 18:00-20:00

10周年特別企画クロストークの第1回目が、10月15日の夜、1階市民ギャラリーでおこなわれました。

ゲストに、染色家でデザイナーでもある小野豊一さん(よつめ染布舎)をお迎えし、出展建築家であるYRADの田中・榎本とアートプラザ館長の椎葉さんの4人で「地方で仕事をするということ」をテーマにそれぞれの考えや思いを話しました。

(以下、実行委員長 矢橋によるレビューです)



風と土

情報技術の発達に伴いどこにいても現代的なサービスを受けることができるのは何も生活における話だけではない。その現代環境はクリエーターにとって情報発信、情報収集、受注を容易にし自分の好きな土地を拠点に選ぶ生き方が可能になり近年地方へのクリエーター移住を後押ししている。しかし同時に問われるのは、地方で仕事をすることはどのように拠点とする地方と関わるのかである。 染色家の小野さんはルーツに広島の旗染家業にもち、現在は国東に拠点を構え活動をしている。国東の伝統芸能や自然を題材に従来の型染の枠を超えた現代的なクリエーションで伝統の新しい展開を図っている。一方建築家ユニットのYRADは東京でのイベントプロデュース活動における総合的な視点やグラフィックデザインの視覚的テクニックを建築デザインに持込み、多様な感覚を大切に創作を行なっている。現在は大分市を拠点に住宅や公共的な建築を手掛けている。 両者のクリエーションに共通する事は「適度な他者性」である。誤解を恐れずに言えば、よき隣人でいる事で常に新鮮な風を届ける事ができると考えている部分である。 農学者の玉井袈裟男氏(1925-2009)は風土舎の設立宣言においてこう述べている「風と土。人にも風の性と土の性がある。(中略)理想を求める風性の人、現実に根をはる土性の人、集まって文化を生もうとする」 県外から移住したりUターン経験をもつ三者は風性の人である。土性の人は拠点をおく地域の人々である。風性の彼らは適度な他者性を保ちながら地域と関わり合うことで風土を作ろうとしているのではないだろうか。彼らの会話を聞きながら玉井氏の言葉が重なった気がした。

 

U_40建築家展2019 実行委員長 矢橋 徹

撮影:花宮 亮(U_40建築家展実行委員)



よつめ染布舎 HP
https://www.yotsume.co/

 

YRAD HP
https://www.yrad.jp/

 

EVENT review vol.2

2019.10.17.thu 18:00-20:00

10周年特別企画クロストークの第2回目が、10月17日の夜、場所を変えて2Fアートホールでおこなわれました。ゲストに、シェフの梯哲哉さん(Otto e Sette Oita)をお迎えし、アートプラザの大橋さん司会により出展建築家である和田恵利子が「地域の作り手と繋がることで生まれるもの」をテーマに、和田が梯さんへ質問を投げかける形でスタートしました。

(以下、実行委員長 矢橋によるレビューです)



攻めと守り
 

今回の対談は伝統料理法と地域の素材を用いたオリジナル料理を提供するシェフ・梯哲也さんと、伝統工法による住宅設計を展開する建築家・和田恵利子さんの対談である。「伝統」と関わりながら創作をする両者であるが、対談では両者の間に相違点がある事がわかった。梯さんの場合は、従来のイタリアンの既成を別府の伝統料理法である地獄蒸しを用い再構築する事で、いわば地域の食材やイタリアンの価値をひらき、伝統を柱としたオリジナルを発見しようとするリベラルな攻めの姿勢だ。一方和田さんは自身の手掛ける住宅を未来も含めた歴史の一端として据えている。伝統は「型(かた)の文化」である。長い歴史の中でトライアンドエラーを繰り返し、知識や経験が蓄積されたものが、技となり、技術となって型(かた)となる。歴史から引継いだ型である伝統工法による住宅を展開し続けることで型を守り、後世につなぐバトン役として振る舞う保守的な守りの姿勢である。しかし興味深かったのが、相違点がありながら梯さんや和田さんに共通する省エネルギーや環境との関係性は、超現代的で国際的な評価軸で語れるのである。ぼんやりと抽象的に捉えられがちな「伝統」が二人の対談によって明瞭化し、私たちに新たな価値の源として伝統を捉える視点をあたえる貴重な時間であった。

U_40建築家展2019 実行委員長 矢橋 徹

撮影:花宮 亮(U_40建築家展実行委員)


Otto e Sette Oita HP
https://www.ottoesetteoita.com/

 

杢のすまい設計室 HP
https://www.mokunosumai.com/

 

EVENT review vol.3

2019.10.19.sat 18:00-20:00

10周年特別企画クロストーク最終回の第3回目が、10月19日の夜、2Fアートホールでおこなわれました。ゲストに、大分を拠点に九州を代表する建築家の塩塚隆生さん(塩塚隆生アトリエ)、長崎で活躍するU_40世代の建築家の佐々木翔さん(INTERMEDIA)をお迎えし、出展建築家の矢橋徹と「九州で建築を設計するということ」をテーマに議論しました。

イベントの終盤には、塩塚さんからU_40建築家展とARTPLAZAに対して宿題も投げかけられるなど、大変有意義な時間となりました。

(以下、実行委員長 矢橋によるレビューです)



多中心の地勢


大分を拠点に九州を代表する建築家の塩塚隆生さんと長崎で活躍するU_40世代の佐々木翔さんをお迎えし、出展者を代表して矢橋を加えた九州を拠点に活動する3人による鼎談である。テーマは「九州で建築を設計するということ」。今回は集合知や類型化することで建築に備わっている地域性を見つけようということではなく、それぞれの立ち位置から拠点とする地と建築のクリエーションがどう関係しているのかを議論した。 テーマに対し塩塚さんは、独立した当初周りに建築家が少なく批評の場も少なかった大分は孤独にクリエーションに立ち向かい自己批評を繰り返しながら建築を創っていく過酷な環境であったと発言している。しかしその過酷な環境は固有の作家性を生み出す原動力になる可能性を秘めているとも語っており、事実塩塚さんの建築が放つ独特な魅力に繋がっている。一方佐々木さんは「タリアセン(ウィスコンシン州にある共同生活を伴ったF.L.ライトの事務所。建築塾としても運営されていた)」と島原の武家屋敷エリアにある自身のアトリエとを重ねていた。孤独な環境を「特別な環境」と捉え、アトリエを県外の建築家との交流や研鑽が行われる開かれた場とし、そこで磨かれた批評力と長崎の地域特性を生かした土着的な現代建築を目指している。私はというと熊本を拠点にしているが塩塚さんの言う孤独環境に近い。そんな中にあって様々な地域から若手が集まるU_40が批評のプラットフォームとしての役割を持っていることは自分にとって大きい存在だ。(今年でU_40は卒業なので次のプラットフォームを作らなければならないが・・・)今回世代が二分する3人の鼎談となった事で九州の建築家を取り巻いてきた環境が徐々に変わってきている事がわかる。2010年代から徐々に都市圏で就業・就労した若手が地元へ帰り活動をするケースも少なくない。佐々木さんがその代表的な存在である。仕事を求めてというよりはローカルアーキテクトとしての生き方を選択する流れがきているように思う。三人全員に共通した意見として、外部からの批評が単なる孤独の創作に建築家としての筋力とバネを与えると考えている点である。 ローカルである孤独に批評が加わり、九州各地の建築シーンが地域ごとにガラパゴス的な進化を遂げた時、九州独自の多中心な建築文化が萌芽するかもしれない。

U_40建築家展2019 実行委員長 矢橋 徹

撮影:花宮 亮(U_40建築家展実行委員)


塩塚隆生アトリエHP
http://www.shio-atl.com/

 

INTERMEDIA HP
http://www.intermedia-co.jp/

矢橋徹建築設計事務所

https://yabashi-aa.com/

アートプラザ U_40建築家展 2019

「継承と創造おおいた2019」第21回大分県民芸術文化祭共催行事

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